大学の山岳部員上條明は、以前家庭教師をしたことのある広瀬由美と偶然新宿の路上で再会した。私立中学の2年で14歳になる彼女は大人っぽく綺麗になっていた。ある日由美の母・友子は大学病院の医師・千葉から、娘が白血病であと半年の命しかないことを知らされる。夫と別れてから女手一つで育ててきた友子は娘に残りの人生を自由に豊かに送らせてやりたいと思い、由美が兄のように慕う明に恋の相手を頼んだ。明は戸惑うが、友人として出来る限りの協力をすることにした。しばらくは由美の病状も変化はなく平穏な日々が続いたが、初夏を迎えて明が教育実習のため長野へ帰省するという日に、由美が学校で倒れた。友子の友人・吉野琴のもつ軽井沢の別荘で療養することになった由美は、時折明の教える中学を訪ねた。そして自分の病気に不安を抱きながらも、明と一緒にいることで安堵するのだった。明るく楽しそうな由美を見て、明は死の訪れる瞬間まで由美と共に生きようと思った。夏が終わり東京へ戻ると、由美は病院で集中治療を受けなければならないほど病状が悪化していた。入院が近づいた日、明と由美はホテルのディナーショーや山岳部のコンパで楽しんだ。その帰り道、由美は明に「もっと生きたい」と自分の感情をぶちまけた。別れた父とも再会を果たした由美を、明は登山に誘い、医師や友子も賛成してくれた。ロープウェイで穂高の中腹まで登り、頂上を目指す2人。息をはずませながらも楽しそうに微笑む由美はまた上に登ろうとするが、明は途中で由美をおぶって下山することにした。明は「やるだけやったじゃないか」と声をかけるが、由美は熱に浮かされていてほとんど反応がない。「明さんのお嫁さんになりたい」と呟く由美に、「もうお嫁さんじゃないか」と答える明。やがて2人の姿は山裾へと消えた。そして由美の部屋の机の上にはひっそりと花の鉢植えが置かれ、穂高の中腹には由美が明との登山の記念にと積み上げたケルンが残された。
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